隠れた重大瑕疵「構造スリット」問題

はじめに

私は今から15年ほど前に、初めて「構造スリット」に出会いました。
最初はどういうものか、なかなか理解できませんでした。

以前は大成建設で現場管理をしていましたが、15年前のこのころは、住友不動産で工事監理や品質管理の仕事に携わっていました。
品質管理の立場でいくつかの新築物件を巡回するうちに、構造スリットに深く興味を抱いた結果、この構造スリットはリスクが大きく、自分が施工に関わっても 100% 完全に施工できないと感じていました。

  その後、3.11 東日本大震災の復旧に携わることとなり、実際に構造スリットによる不具合が発生している現場に出会いました。
それ以来、現在に至るまで12現場の構造スリット瑕疵(不具合)の調査から補修工事まで、自ら立会い、目の前で検査、補修を経験することにより、完全に構造スリット瑕疵(不具合)のノウハウを取得しました。

  補修工事を施工したゼネコンの指導をしたりしましたが、なかなか 不具合は表に出てこないのが実態 です。

また消費者側も発見が難しく、また興味がないため、不具合が放置されている、というのが現実と感じます。

  この 構造スリット瑕疵(不具合)は、簡単に検査することができ、またその検査結果を踏まえて補修もできる のです。

  また声を大にして言いたいのは、 ゼネコンが新築工事中にスリット不具合を検査し、即補修してから仕上げ工事をすれば、消費者側に何の問題も起こらない という点です。

  ぜひコンクリート打設後の検査を実施し、瑕疵による被害者をなくしましょう。

構造スリットとは

  1981年 建築基準法「新耐震基準」から構造スリット が始まりました。
 
 阪神淡路大震災以降、今から約20年前から耐震設計の一手法として本格的に採用され、主に鉄筋コンクリート造のマンション(一部病室)に採用されたりています。
(但し、PC・ALC版 採用は除きます)   

  構造計算上、重要な柱・梁・床と重要でない雑壁をスリット材(厚さ25mm) で縁を切る(隙間を作ることにことにより、地震発生時に、水平な揺れに対し、お互いの部材が ぶつかり、悪影響を与えないようにする役目を持ちます。
(※ 鉄道レールの隙間と同じ)

誰がスリット設置を決めるか

  構造設計者が基本的には建物をシンプルに主要構造部(柱・梁・床・基礎・一部耐震壁)だけで持つように、構造計算(電算ソフトを使用して)する。
   ゆえに建物全体のバランスを考え主要構造部でない「雑壁:構造計算上、耐力を期待してない壁」が主要構造部に地震時に悪影響を及ぼさないように、構造スリットにて縁(隙間)を切る。
設置場所は構造図(軸組図)に表示する。

施工業者は

  指示された構造スリット設置場所に従い、水平・垂直スリット材を型枠施工時 にセットします。
 しかし、コンクリート打設時には、どうしても不具合(ねじれ・曲り・はずれ等)が発生しやすい状況になります。
 
 型枠脱型後スリット設置の状況を調査して、不具合が発見され補修すれば全く問題ありません。

 しかし現実には、全く調査されていないことが多い。

  現実は施工者の問題意識(構造スリットの重要性・補修に費用がかかる・補修基準がない・きちんとコンクリート内に設置されているという錯覚等)の不足により、不具合のまま、仕上げ工事が行われていることが多い。

 これでは、消費者は全くわかりません。

不具合による影響

   構造スリットは、震度6強の地震の発生に対し、人命を守り・建物倒壊を防ぐ目的で設けられています。

 しかし、不具合があると 完全にスリット材により縁が切れず、コンクリートがつながった部分が生じるため、震度3や4程度に対しても弱い部分に力が集中して、 ひび割れ・壊れ等が発生し、コンクリートやタイルの割れ・落下が生じ、危険です。
そして、その先には、漏水・結露の発生原因
となります。      

  その中でも 、
 ➀ 構造スリットの未設置(忘れ・故意)
 ②「柱の断面欠損:スリット材がコンクリート側圧により柱の中に倒れ柱鉄筋(フープ筋・主筋)に接触して重要なコンクリートかぶりがなくなる 」

この2点は、サッカーで言えば「レッドカード:一発退場」と言えます。

 理由は、構造計算の前提条件が、根本から成り立たない ことを示しているからです。

過去20年前からの構造スリットの実態

   まず100%完全に構造スリットを施工するのは至難の技です。

ここ最近2、 3年前からはともかく、それ以前の各物件は、ほぼ100%不具合発生ありと断言できると推測されます。

構造スリットに対しての具体的対策

今から 約20年以降に建築された鉄筋コンクリート造( RC造 )マンションでは、構造図( 軸組図 )にて、構造スリッット採用の有無を調査します。
  
 次に外壁の柱際のシール目地を見てタイルの割れ・異常なひび割れをチェックします。

   築13年目前後の、第1回目大規模修繕工事を行う時に、補修します。

  しかし、残念なことに大規模修繕業者は躯体部に 関しては知識不足・無関心・問題発生により工事が中断や延長になり、この問題には触れない方が得策、という傾向にあります。

(出来うる)最善の方法

   築13年前後の大規模修繕工事実施前、特に築10年(品確法:「住宅の品質確 保の 促進等に関する法律」、時効は10年)以前の物件では、図面で構造スリット設置の有無を調べて、専門家によるサンプル調査を実施する。

   但し 事業主側(施工業者含む)に十分な対応能力があるか否かの調査が重要。
( 治療費が出せないのに、人間ドッグにかかりガンが発見された場合の心身への影響 )。

まとめ

  「構造スリット問題」は大変理解しにくく、他人に説明して理解を得るのは大変難しいことです。
  しかしながら、 実態は完全な施工はまず無理

  建物を建築中に、コンクリートを流し、固まった時点で、すでに構造スリットの不具合は発生しているのです。

  施工業者も正しく施工できていることを信じ、気付かないうちに、ディベロッパーも、購入した消費者も不具合に気付かず、入居後に発生する数々の不具合によって、原因を究明し、やっとその事実に気づくのが現状です。


構造スリット
  
しかも、法律上 20年を超えると全く訴えも出来ず、泣き寝入りしかありません。

  そして、10~20年は「不法行為」責任追及となり、追究先は施工業者のみで、しかも 立証責任は管理組合側にあり、専門知識を持たない個人の集団となる管理組合は、多少の専門家がいたとしても、消費者対組織の関係となり、ハードルがとても高い。

   しかし、10年以内 だと責任追及先は事業主及施工業者で、しかも重大な瑕疵(構造スリット未設置・スリット材が柱内部に食い込んだ「柱の断面欠損」)では、事業主側はその非を認めざるを得ない状況です。

   構造スリットは、本当に隠れた重大な瑕疵 そのものです。

  1日も早く、この構造スリットを建築業界として真剣に検討し、できれば廃止し、この構造スリットに代わる耐震対策を考えるべきです。

 そうでないと最終的にはマンション購入者(消費者)が被害者になるのです。
更に工事を発注した事業主も、また被害者になるのです。

  この 隠れた重大瑕疵「構造スリット」問題は、私たちの普通の暮らしと資産を守るため、真剣に取り組むべき大きな課題として、消費者・施工業者・ディベロッパーの皆様に認識してほしいのです。


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